YAMAHA YZF-R1は2009年モデルチェンジでクロスプレーンクランクシャフトを装備した鼓動感のある直4エンジンを搭載しデビューしたが日本には平成13年度騒音規制が立ち塞がり正規輸入業者のプレストも中古車業者のレッドバロンもすぐに輸入販売が出来なかった
輸出仕様のYZF-R1は近接排気音量が102dBなのだが平成13年度騒音規制では94dBなので対策は必携だった
輸入するにはサイレンサーを新たに作るかパワーを絞るかして音量を94dB以下にする必要があった
あるバイク屋に客が直接どこかの輸入業者が輸入して国内販売しているYZF-R1が届けられ納入整備が行われていた
その新車のYZF-R1は大手が音量規制で販売できない時期に輸入販売されたものだった
ステアリング下に貼られているシールに102dBの表記してある
おそらく日本で最初に販売されたものだろうがカタログの写真を見比べると変更点は外観に見つけられない
バイク屋の社長は何かおかしいと疑いの目で見ていた
エンジンが始動される
スロットルをひねり回転があげられる
しばらくするとなにかおかしい事に気付く
ガソリンの匂いが排気にまじる
エンジンはしっかりまわっているのだから燃焼に問題は無いようだがかなりガソリンくさいのだ
音量は確かに低く聞こえるが抜けの悪い聞こえ方がする
何かが音を詰まらせている
エンジンを止め原因を探る
社長はYZF-R1の排気側を解体し始める
サイレンサーを外しそこから排気管の中を覗き始めた
奥に何かある
排気管に何かが詰められいる
社長は工具でそいつを引っ張り出した
それは見慣れたものだった
もちろんバイクの部品なんかでは無い
台所用品でフライパンの焦げを落す時に使う目の荒いスチールウールである
こいつを排気管の奥に押し込んであったのだ
これなら音量は落とせるし排気ガスは通してくれるし何より安上がりだ
だがこいつは新車なのだ
これで客が納得するか?
こんな対策をして輸入しましたと客に説明するのか?
黙っていたとしても排気ガスのガソリン臭さでは危なくて乗れたものではない
黙っていてもいつかはオーナーにからくりを知られスチールウールを取り除かれる
音量は元に戻りそして車検は通らない
誠実さのカケラも無い
売りっぱなしで後は知らんぷりを決め込むのだろう
買ったやつがバカを見る
そんな商売をするやからがいる事を思い知らされた出来事だった
日本国内に販売する為の車両検査を真っ当な方法でクリアするには相当の時間と金と技術が必要なのだ
小さな輸入業者で通すにはハードルが高すぎる
君のR1は大丈夫ですか?
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